「今夜、君を抱いてもいいかい?」

 耳元で囁かれた言葉はとんでもない内容だった。あまりにもごく自然に、呼吸をするのとなんら変わりの無い様子で言われたものだから、私は言葉の意味を理解するのに小一時間ほど時間を要した。抱くって、なんだ。抱きしめるだけ?それとも、男女の営みのこと?ブルーノの表情を伺えば、灰色の瞳は空を泳ぐことなく、まっすぐに私を捉えていた。不敵な笑みを携えて。

 彼の表情が物語る言葉に孕んだ意をようやく理解したところで、私の両頬は瞬時に熱をもった。視界が揺らぎ、呼吸が乱れた。ブルーノはというと、何事もなかったかのように遊星の元へ歩いて行き、談笑している。プログラムを打ち始めたその後ろ姿は、いつもの無邪気なブルーノそのものだった。

 不意に視線がかち合う。

 楽しみだな。彼の口許は確実に、そう言っている。



 遊星達が夜のハイウェイに試験走行に繰り出した直後のことだった。ブルーノと共に言ってらっしゃいとお見送りをして、シャッターを閉じると、ブルーノは力任せに私を後ろから抱き寄せた。力強い抱擁に思わずよろけて、後頭部が彼の胸板にぶつかったが、彼はそれを気に止めることもなく、指先を真っ先に私のあそこへ伸ばした。

「こんなに濡らして、どうしたの?」

 背後から、ブルーノの官能的な指が太ももを這う。逞しい指先が、スカートの裾をまくり上げて、下着の上から秘部を撫で付けた。子宮の中が収縮し、熱が滾る。舐めるような指の艶かしい動きが、下着の内でのぬるぬるとした触感を増幅させた。布の上からでも分かるほどのあまりの湿り具合に、ブルーノは抱きしめる力を強めて、耳元でふふ、と笑った。

「ほら、見て。すごい濡れてるよ」

 下着の隙間から潜り込ませ、筋をなぞると、指を私の顔に近づけて、これ見よがしに親指と擦り付けては離した。入り口を軽く撫で付けられただけだというのに、透明な粘りが糸を引いていた。目の前で見せつけられた指先に纏わりつくあられもない己の欲望に、羞恥が募る。

ってこんなにいやらしい子だったんだね」

「ふあ…あ、だって…」
 私は生唾を飲み込み、荒れる呼吸を整える。「ブルーノが、変なこと言うから」

「変なこと?僕は至って真面目なことを言ったつもりなんだけど」

 もしかして期待してた?と、ブルーノは意地悪そうに言った。その通りだった。あの言葉を囁かれて、意味を理解した後、私の子宮はひどく疼いて仕方がなかった。まるで彼を求めるように収縮する子宮は収まりが効かず、粘り気のある液体をよだれのように垂らし、下着をぐしゃぐしゃに濡らしていた。体は正直なのだと思い知らされた。ブルーノが私の胸を揉みしだき、乳首に吸い付いて、股間に顔を埋め、舐めまわし、膣内を翻弄されるのかと考えるだけで、乾きなど最初からなかったかのように彼を受け入れる準備をしていたのだ。

 彼は再び指を私の秘部へあてがうと、下着の隙間をぬって指を潜り込ませた。冷えた指先が私の膣内に侵入し、嫌という程存在感を露わにする。慣らすことすらせずとも彼の指をすんなりと咥え込んでしまった事実に、羞恥が臨界点を突破してしまいそうだった。

「わ…、一気に二本も入っちゃった」

「やだ、言わないで…」

「まだ何もしてないのに。いやらしい体だね」

 膣壁を緩やかに指の腹で撫でつけられているだけだというのに、秘部からはぐちゅぐちゅという水音が漏れていた。足はがくがくと震え、やっとの思いで立てている。ブルーノの支えがなければ即座に地べたに座り込んでしまっていただろう。

「っ……、はあ、あっ!」

 湿った指先が突起に触れて、思わずびくりと体を震わせた。足が閉じかけると、ブルーノは太ももを私の股の間に入れて強引に足を開かせる。粘液を擦り付けるように突起を愛撫されると、しびれるような快感が血流を巡った。

「そんなに気持ちいい?ここ」

「んあ、あ!ああっ、や、あ」

「しっ。声抑えないと、ゾラに聞こえちゃうよ」

 嬌声を窘めたる割には、指先は激しさを増して突起を弄くり回してくる。声を抑えろ?無理に決まっている。私は両手で口元を覆って、ぎゅっときつく瞼を閉じた。秘部から溢れ出る快感は意図しない喘ぎ声を誘発させてくる。絶頂へ誘うような指先の動きは容赦なく、私の甘美な陶酔を掻き立てていた。

「ねえ…みんながいない時だけでいいからさ」
 ワザとかと思えるほどにかかる吐息が耳元に纏わりつく。「これから僕とこういうこと、してみない?」

「へ、んん、んあっ、ああっ!」

 自分がこれほどまでに敏感で、容易い体だったなんて知らなかった。彼が挑戦的な誘いを囁いた後、再度膣内に指が二本入り込んで、親指で突起を軽く撫で回されただけだというのに、私は呆気なく果ててしまった。

 呼吸が、心音が、荒い。快感が体の自由を奪う。ブルーノの支えを失った私は、へろへろと力なくその場に座り込んだ。

「ベッド、行こっか」

 ブルーノは屈むと、私の頭を優しく撫でながらそう言った。狂おしいほどの期待に胸が弾む。悪魔のささやきが誘惑する。私はこれから、この人に抱かれるのだ。